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令和元年10月 ソーラー電力セイル実証機「イカロス(IKAROS)」

ID番号 K31802更新日 令和元年10月1日

ソーラー電力セイル実証機「イカロス(IKAROS)」

「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(空宙博:そらはく)」がリニューアルオープンして、1周年を迎えました。
4月からは、宇宙エリアの展示を解説していきます。
解説するのは、博物館や航空機を愛してやまない方ばかり。機体への愛情あふれる皆さんが語る魅力や見るべきポイントをお楽しみください。

第18回目の解説者は、学芸課の高屋佐保子さん

高屋さんの写真

「イカロス」(IKAROS:Interplanetary Kite-craft Accelerated by Radiation Of the Sun)は、木星圏探査のために考えられた推進方法「ソーラー電力セイル」の技術実証のための実験機です。2010年5月21日、H-IIAロケット17号機で打ち上げられました。全体の重量は310キログラム、セイル(帆)の重量は15キログラム、セイル一辺が14メートルの正方形に近い形をしています。空宙博では1/10模型を展示しています。

ソーラー電力セイル

「ソーラー電力セイル」とは、「ソーラーセイル」という風をうけて進むヨットのように、太陽の光の圧力をセイルに受けて進む電力不要のエンジンと電力を使うエンジンを組み合わせた日本独自のコンセプトです。「ソーラーセイル」だけでは太陽から遠ざかるほど光は弱くなるため推力は小さくなってしまいます。そこでセイルに薄膜太陽電池を貼り付けて、太陽光から得た電力を用いるエンジンを併用して宇宙を航行しようというアイデアが生まれました。

ソーラー電力セイル実証機「イカロス」の写真

ソーラー電力セイル実証機「イカロス」の写真

「イカロス」のミッション

技術実証のために「イカロス」は4つのミッションに挑みました。

  1. 一辺14メートルの正方形のセイルを広げて張る
  2. セイルに貼り付けられた薄膜太陽電池で発電する
  3. ソーラーセイルで加速する
  4. セイルを操作して軌道制御を行い、精密な軌道決定の技術を獲得する

セイルの張り方

セイルの張り方1の写真
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セイルの張り方2の写真
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セイルの張り方3の写真
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セイルの張り方4の写真
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セイルの張り方5の写真
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セイルの張り方6の写真
6分離カメラの捉えた「イカロス」

打上げ時の「イカロス」は、直径1.6メートル、高さ0.8メートルの円筒形で、宇宙空間でセイルを広げました。支柱にセイルを張る方法では柱分の重量が増えてしまいます。そこで「イカロス」本体がスラスタからガスを噴射して回転し、その遠心力でセイルを展開する方法がとられました。まずは、セイル先端4カ所に付けられた「先端マス」を本体から分離させ遠心力でセイルを引き出します。続いて、細く引き出されたセイルの面を回転しながら広げていきます。回転させながら展開できるセイルの折りたたみ方は、日本の伝統文化である折り紙を使って研究されました。打上げから19日後の2010年6月9日、「イカロス」は世界で初めてセイルの展開・展張に成功して宇宙を航海し始めました。
宇宙空間を進む宇宙機の様子は、通常数値でしか知ることはできません。ですが「イカロス」は「分離カメラ」を2機備えていました。直径約6センチメートル、高さ約6センチメートルのカメラを本体から分離させて撮影しました。おかげで私たちは宇宙でセイルを展開した「イカロス」の全景を見ることができます。また、分離カメラは世界最小の惑星間子衛星(宇宙空間で分離して別行動をとる人工衛星)としてギネス世界記録に認定されました。分離カメラの発想は小惑星探査機「はやぶさ2」にも受け継がれ、「はやぶさ2」では小惑星リュウグウに人工クレーターを作る実験で、分離カメラを利用してクレーター生成の瞬間の映像とらえることに成功しました。

ソーラー電力セイル実証機「イカロス」の写真

太陽の光を受けて進む「イカロス」のセイルの厚みは7.5マイクロメートル、食品用ラップ(約10マイクロメートル)より薄いフィルムです。総面積約200平方メートルに受ける太陽光からの力は約0.1グラム(1円玉0.1個分の重さ)です。弱々しく感じられますが、空気抵抗のない宇宙空間で力を受け続けることで、どんどん加速することができます。そしてセイルに貼り付けられた厚み約2マイクロメートルの薄膜太陽電池が電力を生み出します。ただし「イカロス」が目標の方向に進むためには、太陽に対するセイルの姿勢を制御しなければなりません。セイル面の細かいシワも太陽光の反射に影響を与えます。「イカロス」の実験を通して、シワの影響を受け流してセイルの向きを制御する手法が編み出され、当初、半年分として用意した姿勢制御燃料を3倍以上の期間長持ちさせることができました。また、セイル面外周には「液晶デバイス」という光の反射率や吸収率を変化させる機器が搭載されており、受ける光の圧力を変化させ、セイルの姿勢を制御しました。セイルには宇宙塵を計測する「大面積惑星間塵検出アレイ(ALADDIN)」も搭載されました。約2800個の宇宙塵のデータを取得し、宇宙塵の分布等を明らかにしました。

運用延長へ

「イカロス」は2010年12月に金星を通過し当初のミッションは終了しましたが、運用が延長され「セイルの膜面の挙動や形状変化の力学的モデルを構築する」という追加ミッションが与えられました。「低スピンレート運用」では、毎分1回転以上を維持していた速度を約1/18まで落としてもセイルはほとんどたわまないことが分かりました。また、機体を逆回転させる「逆スピン運用」では、減速しつつあった「イカロス」の回転速度を立て直すことができました。これらの成果は、将来のソーラー電力セイル探査機計画に反映されていきます。

「イカロス」の冬眠

2011年12月末「イカロス」は姿勢制御用の燃料がなくなり、太陽方向から離れる方向に流され、地球との通信が途絶して「冬眠モード」に突入しました。翌年2月に漂流する「イカロス」を探す「探索運用」が始まりました。発見するためには、セイルに太陽光が当たって発電でき、アンテナが地球と通信できる方向にあり、臼田宇宙空間観測所のアンテナの通信可能な領域内に「イカロス」が捉えられていなければならないという厳しい条件がありました。「イカロス」の姿勢変化のシミュレーションを行い、無数の可能性の中から条件のそろうものを抽出し、2012年9月に「イカロス」との通信回復に成功しました。その後も「イカロス」は3回の冬眠に入り、その都度探索技術も向上していきました。現在「イカロス」が航行する位置は計算されていますが通信は遮断され、5回目の冬眠中です。

将来の惑星探査へ

今後、新しいソーラー電力セイル探査機を木星トロヤ群小惑星という小惑星が多くある場所へ送る計画があります。太陽光の強さが地球近くの1/30程しかない位置であり、ソーラー電力セイルの大きさは1辺約50メートル、イオンエンジンとの併用で設計されています。探査機は小惑星に降り立つランダーを搭載して地質調査を行います。さらに探査機へサンプルを受け渡す技術開発が進められており、小惑星の石を地球に持ち帰るサンプルリターンも行われるかもしれません。今後のソーラー電力セイル探査機の計画にご注目ください。

このページに関するお問い合わせ

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
〒504-0924 岐阜県各務原市下切町5丁目1番地
電話:058-386-8500 ファクス:058-386-9912