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令和元年11月 土星探査機カッシーニ・ホイヘンス

ID番号 K32036更新日 令和元年11月1日

土星探査機カッシーニ・ホイヘンス

「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(空宙博:そらはく)」がリニューアルオープンして、1周年を迎えました。
4月からは、宇宙エリアの展示を解説していきます。
解説するのは、博物館や航空機を愛してやまない方ばかり。機体への愛情あふれる皆さんが語る魅力や見るべきポイントをお楽しみください。

第19回目の解説者は、学芸課の藤橋未花さん

藤橋さんの写真

土星探査機カッシーニ・ホイヘンスは土星を周回する「カッシーニ」と土星の衛星タイタンへ着陸する「ホイヘンス」の2機で構成されており、カッシーニはアメリカ航空宇宙局(NASA)によって、ホイヘンスはヨーロッパ宇宙機関(ESA)によって開発・製造されました。探査機の名はそれぞれ17世紀に活躍し土星の環に隙間があることを発見した天文学者ジョヴァンニ・カッシーニと、土星衛星タイタンを発見した天文学者クリスティアーヌ・ホイヘンスにちなんで付けられました。

土星の探査

土星は太陽系における地球の外側を周回する火星・木星を越えて、さらに外側を周回する惑星です。太陽からの距離は約14億キロメートル、太陽から地球までの距離の約10倍になります。岩石惑星の地球とは違い、木星と同じガス惑星で、大きなリング(環)を持っているのが特徴です。また、現在までに82個の衛星が発見されており、太陽系で最も多くの衛星を持つ惑星なのです。土星をめぐる天体は「小さな太陽系」と形容できるほど、非常に多様で複雑であるため、土星・土星の環、そして多くの衛星をあわせて「土星系」とも呼ばれます。
土星の探査は1973年に打ち上げられたアメリカのパイオニア11号によって初めて行われました。パイオニア11号は1979年9月1日に土星の2万1000キロメートル上空まで接近し、それまで地上の観測では知られていなかった土星の環のいくつかを発見、土星の磁場を測定しました。次に土星の探査が行われたのは同じアメリカのボイジャー1号・2号によってです。1980年と1981年にそれぞれ土星に接近し、土星や土星の環、および土星の衛星などの高解像度画像を撮影しました。また、土星の大気の組成についても測定しました。
しかし、いずれの探査機も土星にフライバイして接近したのみであり、周回して長期にわたって土星を観測する計画ではなかったため、土星系についての十分な情報を得ることができていませんでした。そこで、土星系の本格的な周回探査、および厚い大気につつまれた衛星タイタンに着陸探査するために計画されたのが土星探査機カッシーニ・ホイヘンスなのです。

カッシーニ・ホイヘンスの模型の写真

カッシーニが撮影した土星と5つの衛星写真

カッシーニ・ホイヘンスのミッションと成果

カッシーニ・ホイヘンスは1997年10月15日にアメリカのケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、金星・地球・木星をスイングバイして、2004年7月1日に土星周回軌道へ入りました。
カッシーニは土星の環や衛星の表面、とくに衛星タイタンの大気を徹底的に調査するために、周回しながら遠距離で撮影するイメージ・サイエンス・サブシステム(ISS:Image Science Subsystem)などのリモートセンシング機器や、土星の磁場を測定する磁力計(MAG:Magnetometer)、土星から発せられる電波・プラズマ波の測定を行う電波・プラズマ測定器(RPWS:Radio and Plasma Wave Science)などの科学的観測機器、合計12の機器を搭載していました。
また、カッシーニ本体から分離して衛星タイタンに着陸する探査機ホイヘンスには、タイタンの大気や地表について調査するため、ホイヘンス大気圏構造計測器(HASI:Huygens Atmospheric Structure Instrument)や降下カメラ/スペクトル放射計(DISR:Descent Imager/Spectral Radiometer)などの6つの計測機器が搭載されていました。
また、太陽から遠く離れているため、太陽電池パネルによって電力を供給するのが難しく、原子力電池を3基搭載していました。
カッシーニ・ホイヘンスはこれらの機器を使って、土星系の膨大なデータを収集し、土星系についてそれまで知られていなかった多くのことを解明しました。特に注目されるのは、土星衛星タイタンとエンケラドスについての発見です。

カッシーニ・ホイヘンスのイメージ写真

組み立てられるホイヘンスの写真

打ち上げ前のカッシーニ・ホイヘンスの写真

土星による日食の際、カッシーニが土星を撮影した写真

土星衛星タイタンの探査

タイタンは太陽系で唯一濃い大気をもっている衛星で、地表温度がマイナス180度という極寒のなか、メタンなどの炭化水素が液体の状態で存在できる環境にあるため、メタンの海や湖が存在するのではと考えられていました。ホイヘンスはカッシーニ本体から分離され、2005年1月14日にタイタンに着陸しました。降下時と着陸後にタイタンの地表に海や川のような地形、そして河原の石のように角が取れた氷の塊の画像が撮影され、タイタンには液体のメタンの海や川があったことがわかりました。ホイヘンスが数時間にわたってタイタンからのデータを送り続けて機能停止してから後も、周回機であるカッシーニはタイタンの観測を続け、地表広範囲のデータを収集しマッピングすることで、タイタンの南極と北極に大小さまざまなメタンの湖があること、また、タイタンの大気中にはメタンの雲があり、これがメタンの雨を降らすというメタンの循環システムが存在することなどを発見しました。地球は水の循環システムを持っていますが、地表での液体の循環サイクルが見られるのは地球以外では現在のところタイタンだけです。このようなタイタンの環境は原始地球とよく似ていることが多くの科学者によって指摘されており、地球誕生のプロセスを考えるうえで、タイタンは「実験場」のような天体として注目されています。

カッシーニが撮影したタイタンの写真

タイタンの地表のホイヘンスの写真

ホイヘンスが撮影したタイタンの地表写真

赤外線カメラで撮影したタイタンの写真

土星衛星エンケラドスの観測

エンケラドスは氷で覆われた直径500キロメートルほどの土星の衛星です。カッシーニはこのエンケラドスの南極にある割れ目から噴射物が出ていることを観測しました。その後の探査・研究により、この噴射物は有機物を含んだ水であり、エンケラドスの氷の下部には、全球規模で液体の水の海が存在していることが明らかになりました。さらに噴出物質の分析から、エンケラドスの地下海には岩石に接する高温の熱源が存在することが分かり、これは地球の深海底の熱水噴出孔とよく似ていることが指摘されています。有機物と水、そしてエネルギーという生命生存に必要な要素がそろっていることから、エンケラドスに生命が存在していることが大きく期待されるようになりました。現在もカッシーニが残したデータから新たな有機物が発見されるなど、生命の可能性にむけて研究が進められています。

カッシーニが撮影したエンケラドスの写真

カッシーニが撮影したエンケラドスのプルームの写真

グランド・フィナーレ、そして新たな序章へ

タイタンの北極写真

2017年の9月15日、カッシーニは土星の大気に突入し、すべてのミッションを終えました。このとき4か月にわたって行われた最後のミッションは土星の環をくぐりぬけて観測するという大変難しいもので、「グランド・フィナーレ」として注目されました。当初、2008年までの運用の予定だったカッシーニは、2度の延長を経て、地球を出発してから20年、土星到着から13年の間、土星系についての貴重なデータを収集し続けてきたのです。
そして、今年6月、NASAは土星衛星タイタンへの探査計画を発表しました。タイタンの濃い大気中を回転翼で飛行して移動するドローン型の探査機を送る「ドラゴンフライ」計画で、2026年に打ち上げ、2034年にタイタンへ到着し、土星地表の広範な領域を調査する予定です。この探査ではカッシーニが13年にわたって集めたデータによって着陸する場所が選ばれました。土星の流星となって消滅してしまってからも、カッシーニの業績は土星系の更なる解明のために大いに活かされているのです。
博物館で展示されている「土星探査機カッシーニ・ホイヘンス」は2017年に行われた第二回人工衛星・探査機模型製作コンテスト一般部門の知事賞に選ばれた力作で、カッシーニがホイヘンスを分離している様子を表現しています。カッシーニ・ホイヘンスのミッションにおいてまさにハイライトの瞬間を見ながら、カッシーニの孤独かつ豊饒な13年に思いをはせてみてください。

このページに関するお問い合わせ

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
〒504-0924 岐阜県各務原市下切町5丁目1番地
電話:058-386-8500 ファクス:058-386-9912