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平成30年10月「防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機」

ID番号 K26400更新日 平成30年10月1日

防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機

2018年3月24日に、各務原が日本に誇る航空・宇宙専門博物館として、「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(空宙博:そらはく)」がリニューアルオープンしました。今年度は特別に、博物館で実際に展示されている機体を解説していきます。
登場するのは、博物館や航空機を愛してやまない方ばかり。機体への愛情あふれる皆さんが語る魅力や見るべきポイントをお楽しみください。

第6回目の解説者は、学芸員の加納舞さん

加納さんの写真

航空や宇宙は、どちらも夢があるもの。各務原市は夢がつまった産業が、古くから根付いています。空宙博はそんな各務原市ならではの博物館です。
今回紹介する機体にも、皆さんそれぞれに「おもしろい」「もっと知りたい」と思うことが見つかるはず。機体の構造やフォルム、歴史など、自分にとっての「お気に入り」を見つけてみてください!

「防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機」とは…

「防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機(以下、X1G研究機)」は、高揚力装置(注)の研究に用いた飛行機です。さらに、戦後日本の航空技術開発史の最初に位置する、極めて重要な飛行機でもあります。このX1G研究機の研究は、その後の「三菱T-2超音速高等練習機」や「新明和UF-XS実験飛行艇」、「新明和US-1A救難飛行艇」、「STOL実験機「飛鳥」」など、多くの国産機開発に生かされました。
このように、日本の航空技術開発への貢献が極めて大きく、研究機だった当時の痕跡も含めて、使用時の状態をよく保ち文化財的価値も高いことから、2014年には、一般財団法人日本航空協会より「重要航空遺産」に認定されました。

(注)高揚力装置は、飛行機の揚力を増大させるための装置。飛行機は巡航時にはより早く目的地に到着するため、可能な限り高速であることが求められるが、離着陸時には、できるだけ低速であることが求められます。そのため、高速性能と低速性能を両立させるため、主翼自体は高速向けに製作し、その主翼の能力を最大化するための装置が高揚力装置。

防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機の写真

【防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機 機体データ】

  • 搭載エンジン:コンチネンタル I0-470-D 空冷水平対向6気筒 
  • エンジン推力:194キロワット×1基
  • 最高速度:時速261キロメートル
  • 全備重量:1430キログラム
  • 乗員数:2~4人

「X1G」とは?「サーブ・サフィール91B改」とは?

名前にある、「X1G」の由来は、以下の通りです。
X   experimental(実験・研究)の「X」
1  技術研究本部「1」番目の機体
G 岐阜試験場の頭文字の「G」
(末尾には機体形態を表す通し番号が付きます。)

また、防衛庁の技術研究本部が、スウェーデンのサーブ社が開発した「サフィール91B練習機」を改造して作ったために、このような名前が付けられています。
 

7年の航空禁止。日本の航空界が選んだ道とは

防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機の写真

第2次世界大戦までは、日本でも、長距離飛行や高々度飛行・高速度飛行など、世界記録を狙う研究が盛んでした。しかし、敗戦により、日本は航空機の研究が禁止されます。1952年、GHQから航空再開の許可はおりますが、「空白の7年間」で、日本の航空技術は遅れをとることになりました。そんな中、防衛庁の技術研究本部は当時の自前の技術力を冷静に判断し、いきなり超音速機開発に向かうことはしませんでした。当時の技術力で、日本の航空界が、世界に再び飛翔するための技術アイテム・研究対象として選ばれたのが、「短距離離着陸(STOL : Short Take-Off and Landing)」です。

「日本ならでは」の問題も、高揚力装置の研究のきっかけに

「日本は国土が狭い島国」、「短い滑走路で離着陸をするためには、飛行速度を下げる必要がある」、「速度を落として揚力を稼ごうと機首を上げ過ぎると、翼上面の気流が剥離し失速・墜落してしまう」
こうした背景から、速度を落としても失速しない高揚力装置の開発が不可欠でした。その開発を進めようと、研究はスタートしたのです。

「サーブ・サフィール91B」が選ばれた理由を探る!

防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機の写真

1956年、防衛庁技術研究本部は高揚力実験機の製作を計画し、高揚力装置研究のために、「サーブ・サフィール91B」という単発三座引込脚の訓練・連絡機を選びました。なぜなら、それは、さまざまな形式の主翼を交換して、試すことができるような「改造母機」に適していたからです。主な理由は以下の通りです。

  • 主翼に燃料タンクが無いこと(主翼-胴体間に配管が無い)
  • 主脚が胴体側にあるため、研究用主翼との交換が容易なこと
  • 3人乗のため、後席スペースに計測用機材を搭載できること

防衛庁技術研究本部は、1956年3月末に購入。浜松飛行場で試験を開始した後、研究の舞台は各務原へ移りました。

X1G研究機が進化を遂げる

高揚力研究機としてのX1Gは三形態をたどります。順を追ってのぞいてみましょう。

1.X1G1形態

X1G1形態の3つの特徴のイラスト画像

最初の形態「X1G1」の試験期間は、1957年12月から1958年8月で、3つの特徴があります。

  • フル・スパン・フラップ
    揚力を高めるために最も簡単な装置といえる「フラップ」の面積は、広い方が効率がよいため、主翼の後縁全幅を3分割の大きなフラップにした
  • 二重隙間フラップ
    フラップと主翼の間に、主翼幅の約80%にもおよぶ長大な小翼を挿入して隙間を設け、翼の下方を流れる空気を補給することで、フラップ上面の気流の剥離を遅らせて失速の速度を遅くした
  • スポイラー
    スポイラーとは、フル・スパン・フラップにするとエルロン(動翼)が配置できなくなるため、エルロンの代わりとして、ロール軸コントロールを行うための装置のこと

2.X1G2形態

1959年4月から1960年末にかけて試験されたのがX1G2形態です。主翼を改造した吹き出し翼(境界層制御技術 BLC:Boundary Layer Control)により、飛行速度を落として翼の迎え角が大きくなった時、翼上面の気流が剥離しそうな部位にコンプレッサなどで強力な空気気流を補充し、剥離を防止する研究を行いました。吹き出し翼用の高圧空気流としてガスタービン・エンジンを搭載し、それに伴い主翼内に燃料タンクを移設。さらに、重量増加対策として、エンジンをパワーアップしたことにより、通常形態の2.3倍の揚力を発揮しました。

3.X1G3形態

1962年から1963年8月にかけて試験されたのがX1G3形態です。新規製作した、開閉式スリット付きの翼端板を装備した主翼が特徴です。短距離離着陸機の低速飛行で発生する横操縦(ロール)が鈍くなる傾向は、実用化への課題の一つでした。この改善に向けて、主翼の両端に翼端板を取り付けて主翼端に発生する翼端渦(誘導渦)を抑えて揚力を増加させると共に、翼端板に開閉式のスリットを設ける研究を行ったのがこの形態です。
ただ、翼端板が横操縦に十分な効果があることは確認できましたが、空気抵抗の増加や横風時の離着陸が難しくなるという別の問題があり、実用機への応用はされませんでした。

空宙博で、最終形態を見てみよう!

防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機の写真

現在、博物館に展示されているのは、高揚力研究機としての役目を終えた後、X1G1の主翼に戻された「X1G1B(最終形態)」です。岐阜試験場の連絡機や、テレメータ中継機として使用され、1987年3月にBK117ヘリコプターに後を譲り、岐阜基地内の格納庫で保管されていました。その後、「かかみがはら航空宇宙博物館」の展示機に選ばれ、1996年の開館当初から展示されています。なお、サーブ・サフィール91Bの特徴である二重隙間フラップは電動作動式ですが、電気系統老朽化のため、展開状態での展示はしていません。

加納舞さんの「防衛庁 技術研究本部 サーブ・サフィール91B改・X1G研究機」はいかがでしたか?10月にはアイデア水ロケット全国大会やはやぶさ2の企画展など、空宙博ならではのイベントが盛りだくさん!ぜひ博物館へ足を運んでみてください!
次号の機体紹介もどうぞお楽しみに。

このページに関するお問い合わせ

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
〒504-0924 岐阜県各務原市下切町5丁目1番地
電話:058-386-8500 ファクス:058-386-9912