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平成30年11月「新明和 UF-XS 実験飛行艇」

ID番号 K26643更新日 平成30年11月1日

新明和 UF-XS 実験飛行艇

2018年3月24日に、各務原が日本に誇る航空・宇宙専門博物館として、「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(空宙博:そらはく)」がリニューアルオープンしました。今年度は特別に、博物館で実際に展示されている機体を解説していきます。
登場するのは、博物館や航空機を愛してやまない方ばかり。機体への愛情あふれる皆さんが語る魅力や見るべきポイントをお楽しみください。

第7回目の解説者は、学芸課の丹羽悦子さん

丹羽さんの写真

一年を通してものづくりのノウハウを学ぶ「少年少女発明クラブ」に関わる仕事をしています。2年、3年と続けて申し込みをしてくれるお子さんもいて、経験を生かして成長する姿を見ると嬉しく思います。
空宙博には、製造された機体が年代ごとに分かりやすく展示されています。これほど多くの実機・実物大の機体を見学できるのは全国で空宙博のみです。ぜひ足を運んで、その迫力を感じてみてください。

「新明和 UF-XS 実験飛行艇」とは…

開発当時、防衛庁は、波高3メートル程度の洋上にふわりと離着水できるような、対潜哨戒飛行艇を必要としていました。「対潜哨戒飛行艇」とは、敵の潜水艦の接近に備えて、広範囲を哨戒(見回り)し、警戒あるいは攻撃するために造られるものを指します。
そこで、米国グラマン社の「UF-1 アルバトロス飛行艇(以下「グラマン UF-1」)」をベースに大改造を行い、製作されたのが「新明和 UF-XS 実験飛行艇」です。1962年に初飛行してから1964年まで、飛行艇としての性能を大きく向上させる溝型波消し装置の実験などが行われました。実験で得られた成果は、戦後初の国産飛行艇となる「PS-1 飛行艇」の設計に取り入れられ、空宙博にて屋外展示されている「US-1A 飛行艇」、さらには最新の「US-2 飛行艇」にまで受け継がれています。「新明和 UF-XS 実験飛行艇(以下「UF-XS」)」は日本の短距離離着機(STOL)技術史上において、重要な機体です。

「新明和 UF-XS 実験飛行艇」の写真

【新明和 UF-XS 実験飛行艇 機体データ】

  • 搭載エンジン:内側・ライト R1820-76B 空冷星形9気筒(推力 1063キロワット×2基)、外側・P&W R1340-AN-1 空冷星形9気筒(推力447キロワット×2墓)、BLC用・ゼネラルエレクトリック T-58-GE-6A ターボシャフト(推力783キロワット×2墓)
  • 最高速度:時速333キロメートル
  • 全備重量:13200~15800キログラム
  • 乗員数:4~7人

新規開発の背景に迫る!

海上自衛隊の「国産対潜哨戒飛行艇 PS-1」の開発計画は、「PX-S」の名称で、昭和30年代前半に開始されました。当時は、飛行艇が直接海に着水し、ソナーを降ろして潜水艦を探索するのが効果的であると考えられていました。第二次世界大戦中に活躍した日本の飛行艇技術は世界第一級でしたが、戦後の航空禁止により技術開発に空白期間が生じました。そこで、PX-Sの開発に先立ち、新型飛行艇の技術的研究を行うための実験機を製作することにしたのです。

実験が必要な理由とは?

上からの新明和 UF-XS 実験飛行艇の写真

波の高い荒れた海に着水する場合、波が艇体に当たったときの衝撃が大きく、機体が壊れるため、できるだけフワリと着水できるようにする必要があります。また、水上滑走の際にも、荒れた海では艇体にかき分けらえた海水の飛沫が高く上がり、それをエンジンが吸い込んで壊れたりするなど、不具合が発生するため、飛沫対策も必要でした。こうした荒海での技術的課題を解決することが、UF-XSによる研究の大きなテーマだったのです。これらの解決に向けて、境界層制御技術(BLC)により低速で離着水する短距離離着陸能力の実験や、溝型波消装置による飛沫対策などの実験がおこなわれました。

改造母機とUF-XSの違い

改造母機となった「グラマン UF-1」は、1947年10月に初飛行したレシプロ・エンジン双発の水陸両用飛行艇 HU-16の米海軍型です。改造母機「グラマン UF-1」とUF-XSの違いは以下の通りです。

「新明和 UF-XS 実験飛行艇」の主翼の写真

(1)主翼とBLC関連の改造
UF-1の主翼の桁間構造のみを残し、境界層制御技術(BLC)を取り入れ、前縁と後縁を新規製作しました。
(XIGシリーズによる高揚力研究の成果を大きく取り入れています。また、前縁に固定式スラットを装備し、後縁は三分割して内舷と中央がBLC吹き出しフラップ、外舷はBLC吹き出しのエルロン・フラップとし、エルロン前方には横操縦を助けるためのスポイラーが新設されました。BLCの空気源としては、胴体上部にT58ターボシャフト・エンジンが2基装備されています。)

(2)艇体
水上滑走時の抵抗低減のため、細長く改造されました。
また、艇体前部には、離着水時の飛沫対策として絶大な効果を持つ溝型波消装置を設置しました。UF-XSでは、溝の断面形状が比較検証のため左右で異なっており、その結果が実用機のPS-1に反映されています。さらに、水上低速滑走時の姿勢安定のため、水中安定装置を尾部に装着しました。

「新明和 UF-XS 実験飛行艇」の尾翼の写真

(3)尾翼
富士重工で新規に製作したT型尾翼が取り付けられました。
また、方向舵・昇降舵の舵面にも、低速時の効きを確保するためにBLC吹き出しが行われています。

(4)エンジン
外側にR-1340を追加装備しました。
グラマンUF-1はR-1820エンジンを2基装備していましたが、UF-XSは4発機として開発予定であったPX-Sの実験機として製作されたため、エンジンが追加されました。¥

その後のUF-XS

こうして、UF-XSはPS-1の開発に向けた多くのデータを残した後、1967年11月に用途廃止となります。その後、静岡県清水市の東海大学海洋博物館で長期に渡り、屋外展示されますが、展示状態が良好ではなかったため廃棄寸前となっていました。
しかし、UF-XSはSTOL実験機「飛鳥」にもつながる日本のSTOL技術史の一端を担い、飛行実験機の歴史を物語る貴重な機体です。そのため、1994年10月に空宙博へ展示するべく分解輸送され、製造時の設計図に基づいた大規模な修復作業が行われました。塗装も忠実に再現され、内舷フラップは実際の飛行試験における最大角度の85度にしてあります。ただ、機内の再現は欠落部分が多かったために見送られ、現在も公開していません。

「重要航空遺産」に認定!

「重要航空遺産」認定の盾の写真

UF-XS実験飛行艇は、PS-1飛行艇開発の目的でただ1機製作された希少な機体であり、戦後日本の飛行艇開発の原点です。実験終了後は、長期に渡る屋外展示や改造などにより使用時の状態と大きく異なっていましたが、空宙博での展示に向けた適切な修復・復元処置により、ほぼ実験機として使用されていた当時の状態を取り戻し、現在は文化財的価値を有しています。2014年には、日本の飛行艇開発の歴史を伝える貴重な航空遺産として、一般財団法人日本航空協会より「重要航空遺産」に認定されました。

看板の写真

横からの写真

丹羽悦子さんの「新明和 UF-XS 実験飛行艇」はいかがでしたか?ここでは語り尽くせない機体の魅力は、ぜひ博物館へ足を運んでご覧ください!
次号の機体紹介もどうぞお楽しみに。

このページに関するお問い合わせ

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
〒504-0924 岐阜県各務原市下切町5丁目1番地
電話:058-386-8500 ファクス:058-386-9912