坊の塚古墳発掘調査
令和元年度(第5次)坊の塚古墳発掘調査の成果
令和元年度(第5次)は発掘調査の最終年度になります。
今回は第4次までの調査で明らかにできなかった墳丘細部の構造や、削平された前方部の墳端を確認するため、3カ所に調査区を設定しました。
後円部葺石の基底石と区画列石(調査区1)
後円部墳頂から南側へ調査区を設定しました。葺石は全体的に状態が良く、中段平坦面との境にはひと回り大きな基底石が据えられていました。
また、基底石から約1m上方で、長方形の石を横方向に並べた列石が確認できました。これは葺石を規則的の積み上げるための作業単位を示す区画列石と考えられます。今回の調査で初めて確認されました。
後円部へ登る道(調査区2)
墳頂で祭祀を行う際に、前方部から後円部へ登るためのスロープ(坂道)を確認しました。これを隆起斜道といいます。幅は約6m、高さは本来よりもやや低くなっています。側面の葺石上で円筒埴輪が出土しました。斜道の両側に埴輪が並べられていたと考えられます。
削平された前方部の墳端(調査区3)
前方部の南角と推定される地形を確認しました。墳端は道路の外側の畑地にまで及ぶことがわかりました。
また、墳丘は削平されているため、盛土の部分は失われ、原位置を保つ葺石も残っていませんでした。
平成30年度(第4次)坊の塚古墳発掘調査の成果
平成30年度は前方部に4カ所の調査区を設定し、これまでに行った調査と合わせて、古墳全体の構造を確認しました。
古墳全体が葺石に覆われていました
前方部の構造や形状を調査するため、4カ所の調査区を設定しました。そのすべての調査区で古墳の盛土を覆っている葺石が見つかり、古墳全体に葺石が貼られ、現在もその姿をよく留めていることがわかりました。
前方部と後円部の境目を確認しました
葺石の一番下に配置される、基底石とよばれる少し大きめの石が良好に残っていました。基底石は葺石よりも大きく長い石を横に倒して並べられています。調査区4では、途中できれいに折れ曲がり、前方部と後円部の境目がはっきりとわかります。
墳頂部に円筒埴輪の列を確認しました
調査区1の墳頂部では、円筒埴輪を確認しました。4個体見つかっており、埴輪の上部は欠損しています。これらは埴輪を設置した当時の位置を保っており、墳頂の端部に沿って並べられていたとみられます。
坊の塚古墳の形を復元できました
調査区のすべてで、1段目から3段目までの基底石や平坦面を確認しています。このことから、それぞれの段の位置や基底石の配置方向を確定することができました。
これまで坊の塚古墳の前方部は2段構造といわれていましたが、調査によって3段あることがわかりました。
平成29年度(第3次)の発掘調査の成果
各務原市埋蔵文化財調査センターは、坊の塚古墳の整備保存に向けて平成27年度から毎年、範囲・内容確認のための発掘調査を行っています。
石槨(遺体を納める石で囲われた埋葬施設)本体を調査しました。
昭和初期の記録によると、明治18、19年頃に一度盗掘(記録では発掘)があったとされます。後年に堆積した土を取り除くと、古墳本来の構築土が現れました。調査の結果、盗掘は想像以上に深く行われており、石槨は大きく壊されていました。
複数の蓋石、多数の板石を確認しました
石槨の構築材である多数の板石(壁)と4枚の蓋石(天井)を確認することができました。蓋石は第1次調査で発見されたものと合わせて5枚となり、すべてが天井として並べられていたとすると、石槨の長さは5m以上であったと推定されます。
「献上土器」、「滑石製品」が出土しました。
石槨内からは、石製品や土器、土製品等のさまざまな遺物が出土しました。石製品は、斧形、刀子形、勾玉、管玉、臼玉が出土しています。これらは遺体と一緒に納められた副葬品であると思われます。
一方、土器、土製品は小型丸底壺、高坏のほか2種類の食物形土製品が出土しました。小型丸底壺は内外面が赤く塗られており、高坏は脚部を欠いています。食物形土製品は丸く薄い円盤状のモチ形土製品1点と、魚形土製品2点です。いずれの魚も7~9cmのかわいらしいもので、目や口らしき表現が認められます。
このページに関するお問い合わせ
埋蔵文化財調査センター
各務原市那加門前町3丁目1-3 中央図書館3階
電話:058-383-1123
埋蔵文化財調査センターへのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。