古代瓦の文様をよく観察すると、製作の順序が分かる

ページ番号1005201  更新日 令和3年2月12日

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山田寺跡出土軒丸瓦

軒丸瓦の比較写真


 古代寺院の堂塔(どうとう)の屋根にふかれた瓦のうち、最前面に配置される軒瓦(のきがわら)には文様が入りました。中でも正面から見て丸い形をした軒丸瓦(のきまるがわら)には、仏教にちなんだ蓮(はす)の花がよくモチーフに使われました。瓦を生産するときは、同じ形の製品が多く必要になるため、あらかじめ文様を彫刻した木製の型に、粘土の塊を押し当てることによって形を写し、次々と生産されました。

 木型は、粘土という細かい砂の塊を次々に押し当てられるため、すり減ったり傷がついたりします。一定の枚数を作り、摩耗して文様が不鮮明になってくると、彫刻の凹凸を再生させるため、彫り直しが行われます。どのように彫り直したかは、でき上がった瓦の文様を比較すると分かります。

 蘇原寺島町の山田寺跡(さんでんじあと)から出土した軒丸瓦を観察して、その一例を紹介します。

 1類は、最初の木型で作られています。もっとも精密なディテールをもち、中央に配置される蓮子(れんじ、蓮の種になる部分)に繊細な周環(リング)が付いています。

 2類になると、木型が彫り直されています。蓮子の穴をほじくるように掘り拡げているため、繊細さが失われています。

 3類は、2類まで残っていた外周の圏線(けんせん、外側を走る筋)がなくなっています。代わって、外周は一重の凸線と平坦な面で構成されます。

 このほか、木型の一部が途中で欠けると、その時点以降、瓦製品の方に傷が写ります。木型は現存しなくても、瓦の文様を細かく観察することによって、瓦生産の先後関係を知ることができます。

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