高僧が死の直前に見た世界

ページ番号1005241  更新日 令和3年2月12日

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紙本墨書東陽英朝辞世偈(県重要文化財)

紙本墨書東陽英朝辞世偈の画像

 「紙本墨書(しほんぼくしょ)」とは、「紙に墨で書かれた」という意味で、東陽英朝(とうようえいちょう)という室町時代の臨済宗(りんざいしゅう)の高僧が、この世を去るにあたって書いた「偈(げ)」、つまりは詩のことです。

 東陽英朝は、現在の賀茂郡八百津町の出身で、幼くして仏門へ入り、僧として頭角を表した後、京都の妙心寺(みょうしんじ)四派のひとつ、聖沢派(しょうたくは)の祖となった高僧です。那加新加納町にある少林寺は、明応8年(1499)に東陽英朝が開いた寺院で、同寺には東陽英朝の墓所や肖像画など、関連する文化財が多く保存されています。

 この辞世偈は、縦28.2センチメートル、幅42.1センチメートル。「辞世」で始まり「喝」で終わる5行の詩が書かれ、「永正初元仲秋念四日(1504年8月24日) 東陽寔筆(東陽これ筆す)」に続き「英朝」(上)「東陽」(下)の2つの印が押されています。東陽英朝は、永正元年8月末に少林寺で没したとされることから、まさに入寂(にゅうじゃく=僧が亡くなること)直前に書かれたものであることが分かります。

 詩の内容は、仏教や禅の言葉が用いられ、仏教の境地に達しない我々には真意が分かりかねます。しかし、その筆致は堂々とし、死を目前にした人が書いたとはにわかに信じがたい力強さを持っています。

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