「おししさま」の伝承が伝わる地域の宝
加佐美神社獅子頭(市重要文化財)
蘇原古市場町にある加佐美神社は蘇原10カ村(古市場・伊吹・島崎・野口・熊田・東島・坂井・宮代・大島・飛鳥)の惣社(そうしゃ)で、江戸時代までは八幡宮と呼ばれていました。加佐美神社は平安時代中期にまとめられた「延喜式(えんぎしき)」にもその名が見られる式内社(しきないしゃ)で、この獅子頭や木造狛犬(リンク先を参照)といった指定文化財のほか、室町時代の木札、江戸時代の絵図など数多くの貴重な資料を所蔵しています。
加佐美神社獅子頭は、高さ37センチメートル、幅45センチメートルの木造で、全体に黒漆(くろうるし)が塗られ、金と朱が配されています。付属する木箱には、延宝3年(1675)に野口村から寄進されたことが記されていますが、地域には、この獅子頭が加佐美神社に奉納された由来が、昔話として伝承されています。
かつて、広い各務野に立っていた1本の松の木の上に、獅子頭が乗っているのが見つかりました。野口村の庄屋だった安積清右衛門は、よい香りを放つ獅子頭を木から下ろすと、「おししさま」と呼び自邸で厚くもてなしました。すると、獅子頭は自分が安積家と加佐美神社に縁がある者で、加佐美神社にお仕えしたいと申し出たので、清右衛門が神社へ奉納したということです。
現在も、10月に行われる加佐美神社の祭礼では、この獅子頭が神輿(みこし)の行列を先導し、その役は必ず野口村の住民が務めることになっています。
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